時間に負けない外構デザインをつくる─風化に強いマテリアルの選定法

2025.08.04

屋外空間の設計において、意匠性はもちろんのこと、経年による劣化にどう耐えるかという視点は欠かせません。
建物そのものに比べて、外構や舗装面、アプローチまわりは、常に雨風や直射日光にさらされ、過酷な環境下に置かれています。

せっかく美しく設計された外構空間も、数年で退色・剥離・ひび割れなどが発生してしまえば、住まいや施設全体の印象を損ねてしまう可能性があります。

本記事では、「風化に強いマテリアル」をテーマに、屋外設計の長期的な価値を支える素材の選び方と、設計時の検討ポイントを紹介していきます。

風化に強い外構材料を採用したいときに考えるべきこと

「風化に強い」と一言で言っても、その耐久性には複数の要素が関わります。

・物理的な耐久性:摩耗、凍結、膨張収縮などに対する強さ
・化学的な耐久性:酸性雨や排気ガスなどへの耐性
・美観の持続性:色落ち・くすみ・汚れのつきにくさ
・補修のしやすさ:部分補修が可能で、目立ちにくいか

設計士として、これらをバランスよく評価するには、単なるカタログスペック以上に「素材の経年変化と、その風合いの成熟度」を知る必要があります。
劣化ではなく「味」として受け入れられる素材であるか、それも含めてマテリアルの選定基準になるでしょう。

外構まわりに使える風化に強いマテリアルの選択肢

ここでは、屋外空間に採用されることの多い、耐候性に優れた代表的な素材をいくつか紹介します。

1.天然石(御影石・鉄平石など)

天然石は、硬度・耐久性・耐候性ともに非常に高い素材です。
数十年の風雨に晒されてもほとんど劣化せず、逆に時間の経過によって風合いが増すという特長も持っています。

ただし、初期コストが高く、加工・施工にも技術が必要。
滑りやすさや凍結への配慮も必要となるため、場所と用途をしっかり選んで導入することが重要です。

2.レンガ・敷き瓦

焼成されたセラミック系素材であるレンガや瓦は、屋外でも非常に高い耐久性を発揮します。
とくに排水性や通気性を考慮した下地と組み合わせれば、長期的なメンテナンス負担が少ない設計が可能です。

風合いも独特で、経年による色味の変化が楽しめる素材でもあります。
ただし、雑草や目地の劣化に注意が必要で、定期的な手入れは欠かせません。

3.コンクリート系舗装材(スタンプコンクリート、洗い出し風仕上げなど)

プレキャストや現場打ちのコンクリート舗装材は、コストと仕上げの自由度のバランスが良く、屋外舗装での採用率が高い素材です。
型押しや色付き仕上げ、骨材の選定によって意匠性を高めることも可能です。

一方で、経年による退色・白華・クラックなどの問題は避けづらく、表面処理や保護材の適切な使用が求められます。
質感を重視するなら、均一な打設ではなく「手仕事」による仕上げの選択肢も検討する価値があります。

ロングライフデザインを支える、もうひとつの選択肢

耐久性、自然素材の質感、メンテナンス性、そしてコスト。
これらをバランスよく満たす外構仕上げとして、近年、再評価されている技法があります。

それは、モルタルやセメントに天然砂利や石を練り込み、施工後にその表面を洗い流すことで、骨材を露出させる独特の仕上げ技法です。

この技法の特徴は次の通りです。

・セメントの強度を活かしつつ、骨材の自然な色合いと質感が露出することで、美観が長期間持続する

・風雨や紫外線による退色が少なく、汚れもなじみやすいため、定期的な高圧洗浄程度で十分なメンテナンス性を確保

・骨材やセメントの種類、配合、洗い出すタイミングによって、デザインの自由度が非常に高い

仕上がりは素朴ながらも上品で、和風住宅はもちろん、ナチュラルモダンやインダストリアル系の建築にも調和します。
滑りにくく、足あたりもよいため、玄関アプローチや園路にも適しています。

さらに、現場での職人の手作業によって仕上げるため、大量生産された建材にはない「一点ものの表情」が生まれます。
まさに、機能性とデザイン性の両立を求める現代建築において、ふたたび脚光を浴びている技法といえるでしょう。

風化を味方につける設計へ

建築デザインにおいて、素材は単なる「機能の部品」ではありません。
それは空間の印象をつくり、時間の経過とともに建物の価値を育てていく要素でもあります。

「風化に強い素材」とは、単に劣化しにくいということではなく、時の流れとともに深みや味わいを増していく素材とも言い換えられるでしょう。

そうした視点で選ぶべき外構仕上げのひとつが、「洗い出し仕上げ」です。

この技法は、意匠性、耐候性、メンテナンス性のバランスに優れた、左官職人の手によって生まれる伝統と技術の結晶。
もし、次の設計案件で「時に強い外構デザイン」を求めるなら、ぜひ候補のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。

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